映画『ガリーボーイ』は新しいインド映画だった!
※ネタバレあり注意
『ガリーボーイ』
2018年製作/154分/G/インド
原題:Gully Boy
配給:ツイン
■スタッフ
監督:ゾーヤー・アクタル
製作:リテーシュ・シドワニ、ゾーヤー・アクタル、ファルハーン・アクタル
脚本:リーマー・カーグティー
字幕監修:いとうせいこう
■キャスト
ムラド:ランビール・シン
サフィ:アーリアー・バット
MCシェール:シッダーント・チャトゥルベーディー
スカイ:カルキ・ケクラン
ムラドの父(シャーキル):ビジャイ・ラーズ
モイン:ビジャイ・バルマー
インドの実話をもとに製作された、インド版サクセスストーリー。スラムの貧しい家庭に生まれ育ったムラードが大学時代に『ラップ』に出会い、手探りで作った曲がネットで注目を受けることになる。ムラードのラップがネットで受け入れられた事で、次第にラップの世界に引き込まれていく。大学で一目を得ていたフリースタイルラッパーのMCシェールと共に、バークリー音大の学生スカイに見いだされ、『ガリーボーイ』(路地裏の青年)としてラップの世界でスターを目指す事になるが、その一方で、恋人のサフィとは距離が生まれてしまい、夢と現実の挟間で自身の置かれた状況に葛藤を覚えることになる。インドに今だに残るカースト制度を乗り越えて、自分の夢を自分で切り開こうとするムラードの、夢を実現していく姿が描かれたインド映画っぽくないボリウッド作品。
~新しいインド映画~
インド映画のイメージは、歌って踊って無駄に長いという作品が多い印象だが、本作は今までのインド映画のイメージを少し新しいものにしている。というのも、歌って踊ってのシーンはあるものの、その歌がインド音楽とはかけ離れたラップミュージックなのだ。つまり今っぽい要素を取り入れた新しいインド映画と言えると思う。一旦歌が始まると、踊りつきフルコーラスで始まる為156分という長さになるのもうなづける。作品自体はYoutubeでBUZZることがスターへの第一歩となったり、ラップバトルという踏み台も若者が共感を覚えるような設定になっている。恋人のサフィが男勝りの『強い女性』という設定も今風。古い考えの父親を受け入れることが出来ず母親と共に飛び出して極貧生活に逆戻りしてしまうも、さすがスラム育ち。悪友と共に車を盗んで売り飛ばし、生活やラップ活動の資金を作るあたりが生きるためにはルール無しといったインドのスラムっぽさが表現されている。その一方で、スラムの子供達をドラッグ販売に巻き込む友人に強く反発したりと異様な正義感や倫理観をのぞかせるギャップも面白い。歌って踊ってのインド映画の要素を含みつつ、今風な設定と音楽によって新しいインド映画を感じさせる一本だ。
おすすめ度:★★★★☆